癒し手独神と英傑達 シュテンドウジ編





英傑の中でも特に強い力を持つ、八傑。

神、人、妖から羨望の眼差しを受けるほどの力を持つが、その性格は一癖二癖ある者が多かった。

「なあ、頭―、何で最近構ってくれねえんだよ」

「ご、ごめん、シュテン、最近控えてて」

構わない、というのは一杯飲みの付き合いが悪いということ。

大酒飲みのシュテンドウジのこと、一度付き合えば二日酔い待ったなし。

悪霊が多くなってきている今、体調不良で付け入られるのはいかないと飲酒事態を控えていた。



「そんなこと言って、本当は飲みてえんだろ?」

シュテンドウジは、瓢箪型の酒入れの蓋を開けて琉生に近付ける。

強めの、魅惑的な香りが鼻孔をくすぐり、深呼吸したくなるがとっさに顔を背けていた。

「翌日に残ったら具合悪いから・・・」

「心配してると思って、イイ物採って来たぜ」

シュテンドウジは、懐から青色の葉を取り出す。

見た目からして清涼感のある草からは、爽やかな香りがしていた。



「見かけない植物だね」

「山奥で見つけてよ、こいつを煎じて飲めば二日酔い知らずのすげえ植物だぜ!」

夢のような効能の葉を、琉生は凝視する。

確かに、すっきりしそうな感じはするが本当なのだろうかと訝しむ。



「自分で試してみたのか?」

「酔わないっていうわけじゃないんだけどよ、とにかくいくら飲んでも残らねえんだよな」

それは、シュテンドウジがうわばみだからではないだろうか。

けれど、本当だったら素晴らしいことだ。

「なあ頭、これ使って今日は飲もうぜ」

迷いはあるけれど、試してみたくて仕方がない。

最近飲んでいなかったこともあり、好奇心も背を押した。



「わかった、今夜はシュテンドウジに付き合うよ」

「よっしゃ!今日は大盤振る舞いだ、とっておきの酒を揃えてやるぜ!」

とたんに、シュテンドウジは意気揚々とする。

ぱっと明るくなった様子を見ると、葉の効果が嘘でも本当でもいいかという気もしていた。







夜になり、琉生はシュテンドウジと共に自室に居た。

机の上には様々な種類の酒に、一杯の水色の液体。

「さーて飲み明かすか!と、その前にこいつを飲んでもらわねえとな」

シュテンドウジは湯呑を手に取り、琉生に差し出す。

いかにもすっきりしそうな匂いで、特に警戒心もなく飲み干した。

まるで、胃の中の全てが浄化されるような、そんな清々しさがある。



「飲んだな?じゃあ、次はこいつだ」

シュテンドウジが酒瓶を開け、湯のみにたっぷり注ぐ。

「あ、ありがとう」

匂いだけで酔いそうだけれど、軽く一口飲んでみる。

これは強い、かと思いきやすっと喉を通り過ぎた。



「これ、匂いのわりに飲みやすいんだ」

「おっ、早速草の効果が出たのかもしれねえな、それならじゃんじゃん飲もうぜ!」

シュテンドウジは、大きめの杯に並々と酒を注いで一気に飲み干す。

楽しそうな様子に見ている方も嬉しくなり、琉生も湯のみを空けていた。





植物の効能は本物だったのか、飲んでも飲んでも気持ち悪くならない。

良質の酒ということもあるかもしれないが、頭痛もしない。

全く酔わないわけではなく、頬や耳は赤くなり、目は虚ろ気になっている。

「やっぱ頭と飲む酒はひときわうめえな、盃が進むぜ」

「んー・・・うん、あったかくて気持ちいい」

指先まで温まり、ぼんやりとできる時間が心地良い。

浮ついた気分でいるところへ、シュテンドウジがにじり寄った。



「なあ、頭、どうしても飲みたいモンがあるんだけどよ」

「飲みたいもの・・・?いいよー、苦労して薬草採って来てくれたんだし、お礼するよ」

都で買ってくればいいのかと、琉生は軽く答える。

快い返事を聞き、シュテンドウジはにっと笑った。

「言ったな?じゃあ、遠慮なく味あわせてもらうぜ」

シュテンドウジは盃を置き、琉生の肩を抱き寄せる。

そして顔を近づけ、すぐさま口を塞いでいた。



「むぐ・・・」

酒の匂いが、そのまま口移しされる。

いきなり口付けられて驚いたが、思考が正常に働いてくれなくて押し返そうとしない。

少し苦しくて息を吐くと、すかさず隙間からシュテンドウジが入り込んだ。

「ふぁ・・・」

酒の匂いが、さらに濃くなる。

舌の届くぎりぎりの範囲まで深く挿し入れられ、柔いもの同士が触れる。

液体も、飲んでいた味も香りも混ざり合い、ますます酔いそうだ。

シュテンドウジは、舌の表面、裏側、口内をまんべんなく動き回る。



「は、ふ・・・ぁ、う・・・」

まるで、飲んだものを拭われているような

相手のものまで欲しくなるなんて、とんだ酒豪だ。

そんな柔らかな感触は、気を落ち着かなくさせてしまう。

心音が早まったのが、酒のせいか深い口付けのせいかわからなくなる。





ひととおり弄ったところで、シュテンドウジは身を引く。

そして、拭った唾液を、琉生の目の前で喉を鳴らして飲んでいた。

「美味ぇ、けど薄いな」

「ん・・・たくさん飲んだから、薄まったんだよ・・・」

「もっと濃いやつが飲みてぇ、こっちの方が良さそうだな」

シュテンドウジは、ふいに琉生の太股の辺りをさする。

琉生はびくりと肩を震わせ、手から湯のみが落ちて中身を全て零してしまった。

シュテンドウジの手ごと、酒びたしになってしまう。



「ご、ごめん・・・拭くもの、取って来る・・・」

琉生は立ち上がろうとしたが、シュテンドウジが肩を押して留める。

「そんなモン無くても、俺が拭いてやるよ」

よからぬことを思いついたようで、シュテンドウジは琉生の濡れた衣服を取ろうとする。

「ん?何、して・・・」

シュテンドウジの手首を掴んで止めようとするが、今は上手く力が入らない。

ただでさえシュテンドウジは力が強く、下の衣服をさっと剥ぎ取る。

そして、おもむろに身を下げて琉生の太股に口をつけた。



「ひゃっ」

あられもない個所に吐息を感じ、思わず怯む。

とっさに足を閉じようとしたけれど、膝の辺りを持ち上げられ強制的に開けさせられる。

酒が零れた跡を、シュテンドウジは舌で拭っていく。

「や・・・ひ、ゃ」

際どい個所を舌が這い、琉生は身震いする。

広い面でじっくりと弄られ、酒とは違う液体で濡れていく。

普通は触れられない場所を舐められているものだから、すぐ傍にある部分まで影響が出てしまう。



「んん・・・シュテン・・・っ、だめ・・・」

身じろぐと、シュテンドウジは素直に離れる。

「なぁ、頭の濃いヤツをくれよ。もう酒だけじゃ満たされそうにねえ」

「僕の・・・何?」

答えの代わりに、下腹部を隠す布が力任せに取り去られる。

はっとしたときには、その中の感じやすいものを握られていた。



「あ・・・!」

いきなりの刺激に驚き、びくりと肩を震わせる。

爪は立てないようにして、シュテンドウジは手早く琉生を擦る。

「ふゃ、ああっ」

酒でのぼせているせいもあり、ろれつが回らない。

広い掌で体を覆われ、とたんに悦を覚える。

その感覚に抵抗する術はなくて、さらに血の巡りが良くなっていくようだ。



「一体どんな味がすんだろな、あぁ、早く飲みてぇ」

一度火が付いた色欲は止められず、琉生を攻め立てる手の動きは止まらない。

それはシュテンドウジの掌の中で膨張し、欲情していた。

「やぁ、ぅ、そんなに、擦らないで・・・っ」

羞恥心がそう言わせても、本気で拒否してはいない。

突き飛ばしてもいいはずなのにそうしないのは、酔っているからというわけではない。



「擦るより、こっちの方がイイのか?」

手を止めたと思いきや、シュテンドウジは琉生をぐっと握り込む。

「あぁっ・・・!」

単調な動きが急に変わったものだから、驚きが入り混じる。

そのはずみで、先端から溢れ出てしまっていた。

身がシュテンドウジに包まれたまま震え、熱を吐き出す。

粘液質な感触に、シュテンドウジはにやりと笑った。



「そうだ、コイツが欲しかったんだよ」

余韻に浸る琉生を尻目に、白濁をまとう手を口へ持って行く。

掌を舌で拭い、躊躇いなく喉を鳴らした。

美味いものではないけれど、味覚を満足させるために飲むのではない。

自分の体の中へ、琉生の色欲を取り込んだ満足感を味わう。

粘り気のある液体が喉の奥へ入ってゆくと同時に、シュテンドウジの下半身もいきり立っていた。





琉生は達した余韻でぼんやりとし、あさっての方向を見ている。

思考が働かなくて力も抜けて、ぱたりと仰向けになった。

「なんか疲れた・・・ねむい・・・」

酔いと脱力感が相まって、眠気を誘う。

無防備に寝転がっている琉生を見て、シュテンドウジには新たな欲望が湧き上がっていた。

今度は、自分の猛りを解放させたいと。



「なぁ、頭、次は俺のことも気持ち良くしてくれねえか」

「んー・・・」

もはや生返事しかできていないが、シュテンドウジは構わない。

「頭はそうやって横になってればいいからよ、ただ口さえ開いてくれりゃあ」

「口?あー・・・」

琉生は言われた通り口を開けたが、目は閉じる。

いよいよ眠気が強まってきたところで、口元に何かが触れた。

どこかの皮膚だろうか、それにしては温度が高い。

それは棒状のもので、開いた口へ押し込まれた。



「んぐ・・・」

太いものに隙間を押し広げられ、琉生は呻く。

ぐいぐいと中へ入り込んできて、口を閉じられなくなる。

喉を突き破られることはなく、ある程度のとろこで止まった。

舌の上で、熱を帯びたものから鼓動が伝わる。

太巻きだろうか、何か棒を突っ込まれているような

確かめたかったけれど、どうにも目が開かない。



「は・・・頭・・・」

シュテンドウジは溜息のような吐息を吐き、琉生を見下ろす。

自分の猛りを大人しく咥えているなんて、まるで夢のようだ。

この状況を実感するだけでも、中のものは脈打つ。

激しく動かしたいとも思うが、喉を突いては苦しませてしまう。

わずかに前後し、舌に自らを擦りつけるに留めていた。



「むぐ、んん・・・」

棒が微妙に口の中で動き、歯が少し当たる。

しっとり濡れてきているような、そんな気がして少し吸っていた。

「は・・・」

頭上で、シュテンドウジが息を吐く。

何か動きをするだけで、それは脈動したり震えたりする。

反応させ続ければいいのかと、琉生はさらにそれを吸う。



「あァ、頭・・・」

シュテンドウジは、陶酔するような声で琉生を呼ぶ。

気持ちが良いようで、琉生はあむあむとそれを唇で食んだ。

固くて、熱を帯びていて、少し弾力がある。

軽く歯を立ててみると、驚くようにびくりと震えた。



自分の動作一つで反応するものだから、興味本位で舐めたり吸ったりを繰り返す。

琉生はわかっていないと思うが、大胆な行動にシュテンドウジの欲は最高潮に達する。

ましてやそれをしているのが自分の頭なのだから、感じるものはひときわ強かった。

物理的な刺激に、この状況に高揚感が募りに募る。



「うう、頭・・・ッ・・・」

シュテンドウジが、琉生の口の中で強く脈動する。

とたんに先端から液体が滴り落ち、口内へ溜まっていく。

液がおさまったところで、シュテンドウジははっとして慌てて身を引いた。

琉生は反射的に、喉に溜まった液体を飲み込む。



「うぅー・・・苦い・・・」

喉にまとわりつく粘り気、独特な匂いと苦味に琉生はしかめ面をする。

「か、頭、すまねぇ、そんなモン・・・ほら、酒で流しちまえ」

シュテンドウジは琉生の背を支えて起こし、盃に並々と酒を注ぐ。

それを口元へ持って行くと、琉生はぐいと飲んでいた。

一気に量が流し込まれ、喉がかっと熱くなる。

そのおかげで、奇妙な苦味はだいぶ薄まったけれど

頭がぐらりと傾くような感覚がして、シュテンドウジに支えられたまま昏睡していた。









琉生は、布団の中で目を覚ます。

シュテンドウジが世話をしてくれたのだろうか、服も整っている。

昨日はだいぶ飲んでしまったから、頭痛に苛まれていてもおかしくなかったが

思いの外寝覚めはすっきりとしていて、ゆっくりと起き上がった。

ちょうど、そのタイミングで襖が開く。



「頭!気ぃついたのか」

シュテンドウジは、すぐさま琉生の傍へ寄って顔色を窺う。

「昨日はすまねぇ、盃で並々飲ませて気絶させちまって・・・」

「うーん、だいぶ飲んだね。でも、二日酔いにはなってないみたいだ」

元気な姿を見せて安心させようと思ったが、シュテンドウジはばつが悪そうにして目を合わせようとしない。



「気絶させただけじゃなくてよ・・・頭に、嫌な思いさせちまったし」

「・・・何かされたっけ?良い気分でお酒飲んでたことは覚えてるんだけど・・・」

一部の事しか覚えていないのかと、シュテンドウジは目を丸くする。

「・・・そ、そうか、とにかく昨日はありがとな。・・・ちょっと、見回り行ってくるわ!」

唐突にそう言い、シュテンドウジはそそくさと部屋を出る。

襖が閉まると、琉生は大きく溜息をついた。



シュテンドウジが煎じてくれた薬草の効き目はてきめんだった。

二日酔いもしていなければ、記憶も飛んでいない。

飲んだものが、酒だけでないことも覚えている。

ずっと目を閉じていたから、何をされていたかはっきりとは見ていない。

けれど、口の中にあった太ましいものが何だったのか想像できてしまう。

そして、酔っていたとはいえ自分からそれを吸い、飲んでいた。

昨日の醜態を思い出し、琉生は一人、俯きがちに顔を赤くしていた。





シュテンドウジが出て行きほっとしたのもつかの間、再び襖が開かれる。

「そうだ頭、次の遠征のことなんだけどよ」

琉生は慌てて布団を取り、とっさに顔を隠す。

奇妙な行動に、シュテンドウジは唖然とした。



「何やってんだ?」

「い、いや、気にしないで・・・」

急に身を隠されては、気にしない方が無理だ。

シュテンドウジは琉生の隣に座り、布団を引っぺがす。

「わああ、返して・・・」

顔の赤みなんて、まだ取れていないのに。

慌てている琉生を見て、シュテンドウジは流石に察した。



「熱がある・・・わけじゃねえよな」

視線を合わせられなくて、琉生は俯きがちになる。

「なあ、本当は覚えてんだろ?昨日の事・・・」

「き、昨日は楽しく飲めたよ、薬草のお陰で頭痛もしてない」

早口で取り繕うように言うと、シュテンドウジはしゅんとした顔になった。



「誤魔化さなくたっていい。今更、どう謝っていいかわかんねーくらいのことしちまった・・・」

「あ、あの・・・まあ、確かに、苦々しい思いはしたけど・・・」

いつも強気な鬼が弱弱しくなっていることが意外で、また焦る。

「頭、俺のこと気が済むまで殴ってくれ」

シュテンドウジは頭を下げ、服従を示す。

そんな姿はまるで似つかわしくなくて、見たくない。

琉生は、シュテンドウジへ手を伸ばし桃色の髪に掌を乗せた。



「僕、シュテンドウジと飲めて楽しかったよ。大胆な出来事はあったけど、嫌な思いなんて残ってない」

嘘じゃないと示すように、髪を優しく撫でる。

酔っていたとは言え、本気で抵抗しなかったのは自分の意思だ。

「危険を感じたら、いくら今の状態でも跳ね除けてたよ。

そうしなかったのは、きっと・・・そんなに不快じゃなかったからだ」

そこで、シュテンドウジは顔を上げる。



「頭、そんな甘いこと言われると調子に乗っちまう」

「調子良い方が、シュテンドウジらしいよ」

笑顔を向けられ、シュテンドウジはたまらず琉生に抱き付く。

あまり強くはない、抵抗の余地が残されているような弱い力で腕を回す。

「うう、頭ぁ〜」

情けない声を出す鬼の大将の背を、琉生はなだめるように軽く叩いた。



「また、飲み明かそう。記憶が残っててもいいから・・・」

こうして、堂々と弱い所を見せてくれる。

自分の前で曝け出してくれる、そんなところが愛おしかった。